ジェンダーフリー・プログラムを実施して見えてきたもの
NPO法人SEAN 代表 遠矢 家永子
ジェンダーフリー教育の必要性
シーンでは、民間助成金の交付を受け2002年「ジェンダーと暴力」をテーマにジェンダーフリー教育プログラムを開発し、2004年度末まで(予定も含む)に保育所・幼稚園等11箇所16ワーク、中学校12校50クラス、高校6校22クラスで出前授業を実施してきました。
昨今、男女平等は進んでおり、ジェンダーフリー教育など必要ないといった声も聞かれます。
しかし、子どもたちの日常は、大人社会のジェンダーに大きく影響を受けており、ジェンダーによる不平等や様々な問題の再生産を食い止めるためにはジェンダーフリー教育は必要不可欠です。そして、それは多様性を共存する社会の実現にもつながるはずです。
2003年、アンケート結果から
中高校生840名を対象に実施したアンケートで、「『ジェンダー』という言葉を知っていますか?」という問いに、「知っている」と答えた生徒はたったの12%でした。「知っている」と答えた場合でも、「意味はよく知らない」「男女間の感じ方の違い」など間違ったとらえ方もあり、私たちの知る限りではジェンダーフリー教育はほとんど実施されていないのが現状です。
ですから、「ジェンダーフリー」という言葉の解釈が歪曲され、あたかも「ジェンダーフリー教育」がすべての問題の根源であるかのように言われることには違和感を覚えます。
事後アンケートで、75%の生徒が日本社会の中に男女間の不平等があると答えました。学校内の話を抜粋すると、「学校の先生で、男に厳しく女に優しいこと」(中学・男)「男子の方が先生に優しくされている」(中学・女)といった複数の意見がありました。
授業の中でも、生徒自身に座る席を決めてもらうと、男女で見事に2つの集団に別れ、その間に大きな隔たりができ、グループワークであっても男女が一切会話をしない状況に出合うことがあります。
その状況は、性別を常に意識付け、性別でレッテルを貼り、「そこの男子(女子)」と一くくりに扱い、両者を比べる中で違う対応を行なっていることから生じている問題であると推測できます。性別による対立など一切なく、自由に誰とでも話や作業ができるクラスもあることを思えば、教員がジェンダーの視点を持つことはとても重要なことです。
また、「『女』と『男』の期待されることの違いから、自分が否定されたような気持ちになることがありますか?」という質問に「ある」と答えた生徒の自由記述に、「やりたいことをやらせてくれない」(中学・女)、「手伝おうという気は自分の方にあるのに、男子に任され、結局自分は何もできなかった」(高校・女)、「男は肉体的な仕事を任せられる」(中学・男)といった、性別による扱いの違いへの不満が見られました。
もちろん、感じ方には個人差があり「その方が楽でいい」ととらえている生徒もいますが、「できる」と期待してもらうことが大事で、そういった関わりがあってこそ、生徒の可能性は拡大していくのではないでしょうか。
男女間の不平等としては、「制服」「出席番号が男女別であり、男子が先」「いろいろと(性別によって)比較される」「(女子は)スポーツが制限される」といった自由記述がありました。
教職員アンケートから
「男女には、生まれ持った生殖機能以外の性別による特性があると思いますか?」という質問で、教職員の3人に2人が「ある」と答えました。性別による特性の中に、「性格」「個性」「運動能力の平均値」「文化」などがあげられており、生物学的な性差であるセックスと、社会的・文化的な性差であるジェンダーの違いが曖昧になっていました。
75%の教員が、「ジェンダーについて研修を受けたことがある」と答えましたが、先に述べた通りまだまだ混乱も多く、子どもたちへの影響を考えると、更なる教員研修が望まれます。
「その特性を活かす教育や関わりが必要だと思いますか?」という問に「思う」と答えたのは女性教員38%・男性教員61%で、自由記述に「体育など一部ある」と答えた中学校教員がいました。
「今度生まれかわるなら、スポーツが思いっきりしたいから男がいい」「女の子が理系なのは変なのか?」と書いた女子高生の言葉を思い出し、意識して性別による固定概念をはずす努力の必要性を感じています。
「ジェンダーと暴力には関係があると思いますか?」との質問で「ある」と答えた教員は、研修前の54%から研修後は82%と大きく変動しました。
また、研修後は87%の教員が、ジェンダーフリー教育は学校で取り組まれるべきだと答え、その必要性は強く認識されました。
人として強く優しく生きる社会に
少年院に収容される子どもの約9割が男子です。性別で生まれる差は、こんな数字にも表れます。
「暴力を受けた時に、相談したり逃げたりすることは弱いことだと思いますか?」との問いに、「人の助けを借りず自分で解決しなあかん」から弱いとする意見と、「人に相談するのは勇気がいるので逆に強い」とする男子中学生の意見がありました。この2人の「強さ」のとらえ方は、全く逆です。やり返すことを「強さ」だと考えるなかから、暴力の連鎖が生まれていきます。
「男は強く・女は優しく」というジェンダーを美徳とする考え方がありますが、その「強さ」「優しさ」が今まで定義されたことはありません。「女」「男」といった性別ありきではなく、「人」としての「強さ」「優しさ」を規範とし、支配や暴力以外の方法で「個」の違いを尊重し共存する社会を、ジェンダーフリー教育を通してこれからも子ども達とともに模索したいと思います。
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ジェンダーフリー教育プログラムやアンケート結果の報告書については、SEAN事務局(station@npo-sean.org 072-684-8584)までお問合せ下さい。