「男らしさ」「女らしさ」の再考を (no.104)
広島県庄原市議会にて、「ジェンダーフリー教育の排除を求める請願」が採択されたという情報が
届きました。「各地の教育現場で男女共同参画社会推進に名を借りて男らしさ、女らしさまでも否定する
ジェンダーフリー教育が行われようとしている」とし「真の男女共同参画社会実現のための教育推進」を
求めての請願だそうです。
ジェンダーフリー教育は、『男らしさ』『女らしさ』そのものを否定する教育ではありません。
子どもたちが社会的・文化的につくられる性差(ジェンダー)の画一化から解放され、自己決定
権を行使できる力を育み、公正な関係の下で個々の存在が活かせるということを学ぶ教育です。
庄原市議会で採択された請願の中の『男らしさ』『女らしさ』は、どのような定義づけにおける「らしさ」
なのかが気がかりです。
もし、その『男らしさ』を「弱音を吐かない」「多少乱暴でもいい」「女をリード」することと定義し、
その『女らしさ』を「一歩下がる」「従順」「気配り」などと定義するなら、少年犯罪、性暴力、DV、
引きこもりや自殺は、これからも後を絶たず増え続けるのではないかと懸念します。
今必要なことは、現状をどう分析し、それについて今何をなすべきかであって、目指す社会像を
あいまいにしたまま、こういった請願が次々と採択されてしまうことは、子どもたちの未来に責任を
持てる行為ではないと思います。
日本における暴力に関する現状はというと、少年院に収容される子どもの男女比率は男子9に対して
女子は1、女性を対象にした性暴力は、1995年以降増え続けており、2003年強制わいせつは1万0029件、
強姦は2472件おこっています。この数字も氷山の一角であることは、言うまでもありません。
また、2003年の自殺者は3万4437人で、その70%が男性、その人数は完全失業率と連動しており、
資本主義社会の中で一家の大黒柱となる「男らしさ」の呪縛を感じつらくなります。
SEANでは2004年度、高校生約640名・中学生約660名・未就学児約180名、計1,500名近くの
子どもたちとG-Freeプログラム(ジェンダーと暴力をテーマとした人権教育の出前授業)を通して 出会ってきました。
子どもたちとの出会いを通し、男や女といった性別により周囲から期待されることの違いが
まだまだ存在し、その中で子どもたちの価値観が築き上げられ、そしてその価値観によって個々が 行動を選んでいっていることが明確に見えてきました。
画一化されたジェンダーでは、女子は「悲しい」という感情を否定されにくく、泣くことも、弱音を
吐くことも容認されるのでそれを吐き出すことや、相談することにあまり抵抗はありません。
また、もともと乱暴な行為ははしたないとされるので、男子に比べ加害行為を行なう比率は低くなります。
それに比べ、男子は「悲しい」という感情を「弱音を吐くこと」として否定され、グチを吐くことや泣くこと、
相談することに抵抗を感じ、乱暴であることは容認されるので、おのずと感情表現は暴力的な形で
現れる傾向が強くなります。
そして、「一人前の男」にならなければ「女みたい」「女々しい」と言われ、もっとできないと
「女が腐ったような奴」と言われる中では、女をリードするために男は上に立つんだという考えに
とらわれていくことになります。
DVは圧倒的に男性から女性への暴力であり、女性の5人に1人がパートナーから暴力を
受けた経験があり、命の危険を感じた女性は20人に1人いるとされています。
また、世界的に見ても刑が確定して刑務所にいる犯罪者は日本では男性は女性の16倍、
アメリカは15倍、韓国では27倍、パキスタンでは147倍だそうです。(「ジェンダーの世界地図」大月書店)
実際、2003年度にSEANが実施した調査でも、授業実施後でさえ「もしいじめられたらどのような
対応をしますか?」という質問に対し、「相談する」と答えたのは女子中高生63%(403人中254人)に対し、 男子中高生は22%(397人中86人)という結果でした。
被害をこうむった時の悲しみや怒りは、吐き出さなければ行き場を失い、爆発的な暴力となって相手に、
弱者に、あるいは自己に向かって表現されるなどの連鎖がおこります。
男であれ女であれ「悲しみ」を泣くなど表現してもいいことを、女であれ男であれ「怒り」を暴力的行為に
変えてはいけないということを、「ジェンダーフリー」という概念を通して、子どもたちと一緒に考えて いく教育は、子どもたちの育ちの中で必要です。
請願に書かれている「真の男女共同参画社会実現のための教育推進」を本当に考えるなら、
ジェンダーフリー教育は必要不可欠だと考えます。鹿児島に続くこれらの動きが広がる中で、
子どもたちが被害者にあるいは加害者になる事件が多発しないでほしいと願わずにはいられません。
2005.3.4 かえこ
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