母性・父性とジェンダー (no.109)
児童虐待や青少年犯罪が報道されると、母性・父性の欠落が声高に言われます。
講義終了後、「私は子どもたちに怖がられている厳しい父親ですよ」と自信たっぷりに話に来られる
男性もいて、教育、夫婦の関係性の問題、母性行動などの生物学レベルの話などが、ごちゃ混ぜに
認識され、その上で性別による母親役割・父親役割の欠落こそが問題の根源であるといった、
時代を逆行させるような流れを生み出しているような気がします。
上記のようなご意見には、「では、お連れ合いはあなたのことを怖がっていますか?」と聞き返し、
教育の問題と男女間、特に夫婦間の支配構造の問題を分けて考えるように促したりしています。
2003年度実施の、教員を対象としたG-Free教育セミナー終了後のアンケート結果を見ても、
「ジェンダーと暴力の関係性」については理解が深まっても、いわゆる母性・父性は必要であり、
母親と父親が各々違った役割を担うべきだという考えを解きほぐすには、2時間程度のセミナーでは
時間が足らないという考えに行き着きました。
「『母親は母親らしく』『父親は父親らしく』なければ、子どもに問題が起こると思いますか?」という
質問に対して、全体では「まったく・あまり思わない」は68%、「たいへん・やや思う」は32%。
その回答を性別対比で見ると、「まったく・あまり思わない」と答えた男性は男性の54%、
女性は女性の74%、「たいへん・やや思う」と答えた男性は男性の46%、女性は26%という結果で、 男女で考え方に違いが見られました。
「ジェンダーと暴力には関係があると思いますか?」という質問に対して、教育セミナー終了後
「たいへん・やや思う」と答えた回答者が82%だった数字と比べると、母性・父性といった
概念のとらわれの根強さが見て取れました。 「やはり特性というか役割がある」
「違う役割があって、それが上手く機能していない家庭の子は問題を抱えている率が高いように思う」
「いままでの社会構造の中で育成されてきたものがあるので、結果として父性・母性の役割分担が
あるから」などの自由記入がありました。
多くの場合、母親の役割は「受容・許容・優しさ」、父親の役割は「威厳・指導・厳しさ」などのイメージに
限定されています。
子どもたちの育ちの中で、いわゆる母性的な関わりと、父性的なかかわりは当然必要なことだと私も
思っていますが、母性的な役割の担い手を母親だけに限定し、父性的な役割の担い手を父親だけに
限定してしまうことが、ジェンダーであるのだという認識には、なかなか結びつきにくいようです。
母性は生まれもってのものと考えるのか、幼い命と触れ合う中で育まれるものだと考えるで考え方は
違ってきますが、自分自身の経験をふりかえると、生まれ持ってではないと私は思います。
それに、その母性行動は、女性特有のものではなく、男性にも育まれる「幼い命への愛しみ」なのだ
とも思います。
母性本能として母親の役割を強調するあまりに、父親の子どもとの関わりが希薄になったり、
「父性の復権」とばかりに父親の威厳を強調したり、あるいは母親をも支配下に置くなど夫婦間の
主従関係が肯定されたりもしています。
ある方から聞いた話なのですが、「父は家のことならなんでも、母を使っても良いのだということを
自分に態度で教えてくれた」と話した学生がいたそうです。家族の中で個人の人権を侵害するような
関係があるということは、子どもたちにその上下関係や構造を学ばせる行為だと私は思います。
子どもの育ちの中には、「受容・許容・優しさ」や「威厳・指導・厳しさ」の両方の関わりは当然必要でしょう。それを性別によって役割分担する必要はなく、そのことで夫婦間(男女間)の力関係を子どもたちに
伝えてしまうことの問題をもっと真摯に考えるべきなのではないでしょうか?
子どもたちに「いけないことはいけない。自分を含め、誰もの人権を侵害してはいけない」と、
はっきり伝えるのはすべての大人の役割です。そのことと、子どもたちに威厳を示すために、
父親が母親までも自分の支配下に置くこととはまったく別の次元のこと。男は女を従わせるもの、
そのことを態度で示すことは、女性を自分の支配下に置こうとする性暴力などの犯罪を増やし、
容認していくことにもつながることなのだと私は思います。
今後も、上記のことを視野に入れつつ、社会を読み解いていきたいと思っているのですが、
みなさんのご意見も是非お聞かせ下さい。
2005.5.19 かえこ
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