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家族像とジェンダー (no.111)

「家族・家庭においては、父親と母親の性別役割分担がある。胎児期は母親との身体的な接触と
相互作用によって子供の心が安定し、その後の発達の基礎となる。父親には子供の心を活性化し、
自立を促し、社会のルールやセルフコントロールなどを教える独自の役割分担があり、性役割分担は
否定できない。父親、母親、男性、女性の適当な役割分担は必要である。」

「人間は、本能によらず、文化や社会的学習によってはじめて男性のあり方、女性のあり方を身につける。
固定的な男女の型を学習しないとジェンダーフリーのイデオロギーが主張するような男も女もない状態に
なり、個性や能力を発揮できなくなる」

 上記の2つの文章は、自治体の男女共同参画基本条例案に対するパブリックコメントに提出された
ご意見です。性役割分担は必要だという意見と、性役割を学習して初めて、個性や能力が
発揮できるようになるといった、私からすると首を傾げたくなるような見解です。性役割などというものは、
時代によっても、地域や民族によっても違うということを、ご存じないのかもしれませんが、
288件提出されたパブリックコメントのうちの4割近くがこういった「ジェンダー・フリー反対」の意見で
あったということを聞き、組織票のすごさや怖さを感じました。

 特に、1つ目のご意見には、家族における父親役割と母親役割について、適当な役割分担が必要で
あると書かれています。
 家族は、人と人とが関わり合う集合体の基本であると私も認識していますし、ジェンダーフリーを
主張しているからといって、家族の中の人間関係をないがしろにしたことなどありません。
仮に、ジェンダー・フリーという概念が広まることで、離婚する家族が増えたとしても、それはその概念と
出合った事でもうすでに崩壊している関係性がはっきり見え、表面化しただけのことで、制度や
ジェンダーバイアスによる力関係で人権を侵害されていた人たちがようやく「NO!」を主張することで
関係性を絶つことができたといったケースが圧倒的なのではないでしょうか。
 特に、子どもにとって、安心で成長に導いてくれる大人が存在する「家庭」があることは
とても重要なことですが、血縁や制度、力関係だけで関係性を維持している大人の姿が、
子どもにとっていい家庭環境であるとは言えません。
 それなのに、何故、血縁の家族、制度上の家族にこだわり、両親がそろっていて各々の性別役割を
担って初めて、幸せな家庭環境であると断言できるのでしょうか?
 血縁の家族、制度上の家族に閉じ込められる中で、DVや虐待、婚外子差別など数々の人権侵害や
暴力が生じ、その中で苦しみ、場合によっては殺されていく人たちが後を絶たないことを、真摯に
受け止められる社会でありたいと思います。

 少し話は変わりますが、SEANでは2002年に絵本100冊を調査分析して1冊の報告書を発行しました。
その報告書を作成してみて、2000年以降出版の最近の絵本の中の家族像がどのように
描かれているかが気になり、さらに100冊の絵本に登場する家族像を調査分析し、報告書に
まとめることができ、あと数日で印刷が上がってくる予定です。
 なんとかまとめ上げた2年越しの報告書ですが、なかなかの力作なので、ぜひご購入の上
お読みになって下さい。
 国内の作家の作品の多くは、まだまだ従来型のステレオタイプの家族像が多いのですが、
海外の作品の中には、母親役割・父親役割が固定化されていないほのぼのとした家族像や、
里親や一人親家庭の家族なども登場してきており、ストーリー的にも優れた作品も見られました。
 相変わらず主に登場する子どもは、男の子が58%、女の子が28%で、男の子の方が多く
登場しています。その子どもと関わる大人は両親(64%)・母親(23%)・父親(13%)と父親よりも
母親の方が多く、祖父母はというと祖父母(30%)・祖母(59%)・祖父(11%)と祖母が多く登場しています。
 子どもは男性性で、関る大人は母親や祖母といった女性性であるというパターンが主で
あるということが見えてきます。
 働く母親も登場してきてはいますが、まだまだ日本の作家が描く絵本に登場する母親は
子育てに忙しく、「ジェンダー・フリー反対派」の人たちが理想とする家族像が描かれているものが
まだまだ主流のように感じます。
 反対派の人たちが言うように、それが日本の伝統だからなのでしょうか?それが国内では
売れる絵本だからなのでしょうか?それとも、多様な家族像を描ける作家が、まだまだ
育ってきていないからなのでしょうか?
 いずれにしろ、現実社会の生身の子どもたちは、多様な家族の中で生きています。その子どもたちが
出合う絵本がステレオタイプの家族像ばかりであっては、自己肯定感を育てることができない
のではないかと危惧します。
 報告書はSEANにお申し込みいただければ、振込用紙(報告書1000円+送料300円)と報告書を
お送りさせていただきます。「家族」を考える、一つのきっかけにして頂けると幸いです。

                    2005.6.17 かえこ


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