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「にがい涙の大地から」を観て (no.112)

 2000年7月にこのコラムを書き始めてから、月2回コラムを頑張って発信してきたのですが、
ここへきてこの7月初旬のコラムをお休みしました。書きたいことはたくさんあるのですが、
なにぶんからだは1つしかないので、配信するのをあきらめました。
1回お休みしたことで、私自身は少し寂しい思いをしているのですが、みなさんはお変わりなく
お過ごしでしょうか?

 さて、少し前になりますが、5月22日(日)に「にがい涙の大地から」の映画上映と、
監督・撮影・編集に携わった海南友子さん(かなともこ/33歳)の講演会に参加しました。
この映画の話はずっと書きたいと思い資料を大事にかばんに入れつつ、ようやく本日文章に
することができたという次第です。

 海南さんは、2003年に中国のハルピンで27歳のリウ・ミンに出会いました。リウ・ミンの父親は
1995年に、旧日本軍が遺棄した砲弾で手足が吹き飛び、17日間後に帰らぬ人となりました。
当時19歳だったリウ・ミンは父の莫大な治療費のために、一生働いても返さないほどの借金を
背負ってしまったという話を聞き、海南さんは突き動かされるように約60時間もの撮影を
1人で行い映画にまとめられたということです。
 戦時下、旧日本軍は戦争を有利に進めるために国際条約で禁止されていた毒ガス等を
秘密裏に製造・使用しました。敗戦時、発覚を恐れた日本軍は組織的にそれらを遺棄、
今も中国に70万発(内閣府発表)以上の毒ガスが眠っており、砲弾については数え切れない数だそうです。
 海南さんが撮影時に、出会った被害者は60人。ある者は失明し、ある者は生殖機能を奪われ、
ある者は下半身が吹き飛ばされて殺され、そして、多くの被害者は莫大な治療費で借金に追われ
自殺に追い込まれるなど、未来のない人生を送っているという話でした。

 日本国内の毒ガス等の調査は、環境省が2003年11月に「旧軍毒ガス弾等に関する全国調査結果」
を取りまとめており、全国の毒ガス弾等の保有、廃棄などに関する情報を地域ごとに138の
事案として公表しています。しかし、国内でも環境汚染の観点での調査ですから、他国に眠っている
兵器の責任までも視野に入ってこないのかもしれません。

 2003年8月にも中国東北部のチチハル市で新たな毒ガス(化学兵器)事故が起こり、1名死亡、
43名が深刻な後遺症を負っており、その後も新たな事故が起こり続けているということです。
そして、リウ・ミンたちが日本の賠償責任を訴えた裁判は勝訴したにもかかわらず、日本側は控訴し、
さらに悲しみのどん底に突き落とすという事態になっていると聞きました。

 戦後と言われるこの時代に、まだ戦争が終わっておらず苦しみ続けている人たちがいることを知り、
海南さんは次回作を変更し1年かけてこの作品を完成させ、1人でも多くの人にこの事実を知って
欲しいと話されました。

 中国や韓国との関係の中で、「日本はすでに謝っている、何度謝ったら気がすむのか?」
「従軍慰安婦などという言葉はなかった」などの心無い発言を耳にします。
 力関係において、力を持たされていない人たちの人権を侵害されても、聞く耳を持たない、
それどころかあたかも被害者の方に被があるかのごとく言われ2次被害にあうことがよくあります。
 それに対して傍観者になることは、権力を持つ側に加担することを意味するのだと思います。

 自国であれ他国であれ、全ての人の存在が大事にされる社会を目指してこそ、
育まれる「愛国心」なのではないでしょうか。

「戦争が終わって60年、中国の大地には今も日本が棄てた兵器たちが眠り続けている」

 その事実を偶然出会った日本人の海南さんに伝えたリウ・ミン、そして、そのことを映画にして
伝えようとした海南さんに敬意を表したいと思います。

 この映画の上映会の企画を、海南友子オフィスが呼びかけています。
tel/fax:03-3357-5140 info@kanatomoko.jp です。規模の大小や経験の有無は問わないそうです。
1人でも多くの人に、この映画を観ていただきたいと私も心から思います。

                         2005.7.17 かえこ


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