痛ましい事件の背景にあるもの (no.119)
子どもたちが犠牲になる事件が後を絶たず、みなさんも心を痛めておられる事と思います。
先日、第4回CAP全国研修セミナーがドーンセンターで開催され、私は11日の分科会に参加し、
アメリカカリフォルニア州MAWS(DV防止センター)の副ディレクターであるケイト・ケインさんの
お話をお聞きしました。
ケイトさんは京都宇治市で起こった事件を報道で知り、悲しみと憤りと共に、ジェンダーと暴力の
関係について分かりやすく話され、それを聞いて改めてこれまでのSEANの取組みの必要性を
確信し、勇気と責任を持ち帰りました。 『全国的伝染病である暴力』ジェームス・ギリガン著
「人類が暴力を乗り越えるためには、まず家父長的な名誉と恥の意識が男性に、
暴力を強制している事を認識することが必要である。」
「『男らしさ』が重要という考え方がある限り、いじめから殺人までの様々な暴力を
減らす事はできない。」グロリア・スティネム
ここのところ、世間を落胆させている事件の多くの被害者は、女の子たちであり、
加害者は男たちです。
3日に1人の割合で、毎年120〜130人もの女性たちが夫の手によって殺されていると
いったDVも、数々の性暴力も、被害者は圧倒的に女性であり、加害者は男たちです。
しかし、そこに着目する報道に出会わないことが、とても不思議でなりません。
加害者に男性が多いといっても、すべての男性たちが加害行為を行うわけではなく、
そのことがこれらの事件を解決する鍵なのだと私は思っています。
生物学的な意味合いではなく、ジェンダーという社会的・文化的につくられる性役割に
おける主従意識が、暴力を生み出す土壌になっているにもかかわらず、まだまだそれを
致し方がないこととして、あるいはその主従関係における規範は必要な事として容認す
加害者の視点が社会を覆っています。
そして、その容認こそが、こういった事件の再犯につながっているのだと思うのです。
特に、性的な関係において、女性は男性の快楽の道具として扱われる事が容認されている
現実があります。
そして、その快楽を追求する事が男として一人前である証とされている社会に、居心地の悪さを
感じている男性もきっとたくさんいるに違いないと感じているのは私だけではないはずです。
心が通い合わない快楽だけの関係や、相手の人権を踏みにじってでも、その快楽を追求しよう
とするメディア、風俗・ポルノ産業に歯止めをかけなければ、この痛ましい事件や現実は終わり を見るどころか、拍車がかかっていくものと懸念します。
男たちから見て、女たちは「弱い存在」であり、「守るべき存在」であると同時に、常に自らを
「男たるもの強くあるべき」と奮い立たせる為、「従順である存在」であることを女たちに
強要していくというサイクルの中で、服従しない、支配下に置かれる事に抵抗する女性たちは
抵抗すればするほど、犠牲になっていくのかもしれません。
けれども、抵抗し続ける事、そしてその構図に異論を唱える男性たちともつながっていくことが、
数々の痛ましい事件の歯止めとなるものと信じています。
出前授業で子どもたちに実施しているSEAプログラムでは、「男の強さ」「女の優しさ」ではなく、
「人として強く優しく」生きる事を子どもたちと共に考えます。
「授業を聞いて、強さはけんかに使わず人を守るために使います。人には優しくしたいです/中1」
これは、授業を受けた生徒が書いてくれた感想です。「強さ」を考える時、性役割で考える「男の強さ」は、
どこか人よりも優位に立ち支配し、暴力を肯定するニュアンスが伺え、その暴力の矛先は「女・子ども」など
構造的な弱者にむけられていくことが事実である事は歴史が物語っています。
社会には、たとえば大人と子どもとの関係のように、様々な形で力関係が存在します。
その力関係を支配関係にしてしまわないことが、本来の「人としての強さ・優しさ」であり、
基本的人権を保障する事なのだと思います。
「ジェンダーと暴力」をテーマとしたSEAプログラムの普及は、現代社会において必要不可欠で
あると実感しています。
2005年はもう終わろうとしていますが、2006年も継続的に普及活動に力を入れていきたいと
思っています。 みなさんもぜひ関心をもってくださいませ。
2005.12.16 かえこ
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