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「人権」規範と「道徳」規範(no219)


 4月7日(土)の朝日新聞朝刊に、「民法見直し自民ブレーキ/離婚後出生『300日規定』」と
いう記事が掲載されました。

 2年前の夏の国立女性教育会館(ヌエック)の研修で、「婚外子差別」に関するワークショップに
参加し、民法772条には「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とみなすという規定があり、
その民法による差別で苦しめられている人たちのお話をお聴きしました。
 前夫が「離婚を承諾しない」「DVで逃げており連絡を取ることは命に関る」など、
様々な理由で離婚できない人たちが存在する事、出生届を出す際に「子どもの父親は国が決める(!?)」
と職員に言い放たれたというひどい話などを聴き、心を痛めたことを思い出します。
 何らかの状況の下、子どもが民法772条の規定によって戸籍を持てないまま成長し、
海外に行く修学旅行でパスポートを発行してもらえずに困っていることなどが報道されるようになり、
3月28日に国会でも自民・公明両党の政策責任者会議で上記の民法772条と、
民法733条「女性に離婚後6ヶ月以内の再婚を禁じる」の規定を見直すプロジェクトチームが
発足したところでした。

 党内国会対策委員会の幹部は、「離婚して別の男の子を出産しようとはけしからん」とコメントし、
法相は「貞操義務なり、性道徳なりという問題は考えなければならない」とコメントしていると報道されました。
また、「『家族の再生』を掲げる首相は、伝統的な家族の価値観を重んじ、選択的夫婦別姓が議論に
なった97年には、党内の会合で『わが国がやるべきことは民法改正ではなく、家族制度の立て直しだ』
と主張していた。」と記されていました。

 人権侵害を受けている子どもたちの権利を保障する議論は、女性への「貞操義務」「性道徳」
「家族制度」に姿を変えてしまったようです。
 本来法律とは、国家権力など強者によって個の人権が侵害されないために制定されるべきものであり、
1部の国会議員の道徳観念や画一化した価値観の押し付けであっては困りますし、
実際に困っている子どもの人権救済を最重点課題として議論すべきだと思います。

 話は変りますが、SEANでは2001年のプログラム開発時より中高生を対象に人権教育の出前授業を
実施する際、事前・事後に生徒たちにジェンダーに関するアンケート調査を実施してきました。
今回、2005年度に実施したアンケート調査を分析し、『ジェンダーと暴力』の人権教育実践報告書
「人として強くやさしく」を発行したところです。
 「『男は〜』『女は〜』といった、性別による役割の違いは必要だと思いますか?」という質問に対し、
中学校2校(約260人)の生徒が授業実施前では35%が必要であると答え、64%が必要でないと答えました。
授業実施後でも34%が必要、64%が必要でないと答え、授業内容が「暴力」に焦点を合わせており、
「暴力」予防の観点からは事後では効果が出ているものの、性役割分業を肯定する考えを
大きく変える結果を得ることは出来ず、「男は仕事」「女は家事」といった「性役割分業」の考えが
非常に強固であることが伺えました。

 生徒が必要だとする理由記述には、「女が力仕事をすると失敗する」とする差別的な意見や、
「なんとなく」「とくにない」といった明確な理由のない意見や「みんなが自由にしてたら
めちゃくちゃになる」「男と女のバランスが崩れていく」「そうじゃなきゃ誰もやらないとかいうことになる
かもしれない」という意見が目に付きました。
 必要でないとする理由記述には、「不平等だから」「みんなでやればいいと思うし、やったらダメな事は
みんながやらなければいい」「それぞれが協力してやる事が必要」「自分の好きなものをしたほうが
気持ちいい」などの意見が見られました。
また、「違う考え方や生き方を、互いに尊重し合いたいと思いますか?」といった質問との相関を見ても
「必要でない」派は「必要である」派よりも尊重し合いたいと答えたものが多く、「人への信頼」「個の尊重」
「協力し合う」といった考えが根底にあることが伺えました。

 心を教育しようとする「道徳」規範と、多様性を共存するために知恵を出し合おうとする「人権」規範とでは、
根底にある考え方が全く逆です。 
 「人権」の考えは、人は一人ひとりが違う存在であり存在意義がある事を信頼する事から始まります。
人権尊重で成り立たせる規範は、違いをもって共存するために、そして誰もが大切にされ、
活かされる社会を築くために、知恵を出し合い協力し合う事、自分が大切にされるように他者をも
大切しようとすることであると言えます。

 問題なのは性別によって画一化される「特性論」「役割分業」「家族制度」から、
個の人権の侵害や差別等をもたらしているという現実です。
しかし、残念な事に国の方向性は、選挙などを通して国民の意向によって決まっていきます。
 今回の選挙結果や様々な報道を見ながら、人権教育の普及にこれからもっと力を入れていかなければと
思いを新たにしているところです。

 上記で紹介した報告書と、啓発パンフレットを下記に紹介していますので、一人でも多くの方に
読んでいただきたいと思います。

                      2007.4.10 かえこ

::::::::::【SEANのもぎたて情報】:::::::::::::

1) 設立10周年記念イベント&交流会
  6月10日(日)午後
  原点に返って、これからの10年を考えよう!!
  「働きたい!子育てしたい!それって贅沢!?」
  【出演者】
  遠矢 家永子(NPO法人SEAN理事長)
  黒瀬 友佳子(帝人クリエイティブスタッフ株式会社.
           人財部 ダイバーシティ推進室長)
  橋本 久美子(吉村紙業株式会社代表取締役)
  中村 淑子(SEAN サポートとんがらし代表)
  会場:高槻市立総合市民交流センター視聴覚室
  *詳細は後日掲載します。
  
2)報告書のご紹介

◆ジェンダーフリーで綴るNPO発信レポート
  「かえこのちょっと言わせて」
  (A5判52〜59ページ)各400円
  no4のみ在庫あり
 【内容】
  ・ジェンダーってなぁに?
  ・待つ、許す、思い続ける
  ・弱さを再考する 他
 
◆『ジェンダーと暴力』の人権教育実践報告書
  人として強く、やさしく
  〜子どもたちを被害者にも加害者にもしないために〜
  SEAN G−Freeプロジェクト発行
  A4判 全174頁 2000円
  *大阪府ジャンプ活動事業
  【内容】
  T.SEANがめざす社会とSEAプログラムの三つの柱
  U.G-Freeプロジェクトの歩みとSEAプログラム
  V.中高生のジェンダーの意識:事前アンケート分析
  W.ジェンダー意識の課題とSEAプログラムの効果:
    アンケート事前・事後 対比分析
  X.プログラム実施後の感想
  Y.G-Freeスキルアップ講座記録:
    「子どものセクシュアリティと『性』をとりまく社会の現状」
  Z.VOICEと寄稿

◆啓発パンフレット(上記報告書ダイジェスト版)
 わたしもあなたも★みんな活き活き
“こころ”に決めたことに男も女もないんや!
 A3判1枚 フルカラー 50円
 【内容】
 ・今度生まれてくるとしたら…
 ・性別役割はいる?いらない?
 ・エンパワメントとは?
 ・「性」のありよう
 ・暴力の連鎖
 ・ジェンダー規範と人権規範 他

◆2006年度高槻市協働活性化モデル事業実施報告書
 やったらできた!!「協働」実践
 −子育て支援をジェンダーの視点で−
 A4判 全70頁 800円
 【内容】
 T.平成18年度高槻市協働活性化モデル事業の取り組み
 U.子育ち講座
 V.情報ライブラリー
 W.子育てママのグチグチ電話相談
 X.「協働」への新たな理解に向けて
   (大阪府・高槻市職員研修受入れ)

◆子育てに関する意識調査報告書(仮)
 SEAN子育て支援プロジェクト発行
 *5月中発行予定


ブックレットになりました!!
ジェンダーフリーで綴るNPO発信レポート「かえこのちょっと言わせて」
no.1(1〜20) →在庫なし
no.2(21〜40)→在庫なし
no.3(41〜60)→在庫なし
no.4(61〜80)

申し込み
各400円


「かえこのちょっと言わせて」バックナンバー
no.81/no.82/no.83/no.84/no.85/no.86/no.87/no.88/no.89/rinjigou/no.90
/no.91/no.92/no.93/no.94/no.95/no.96/no.97/no.98/no.99/no.100/
no.101
/no.102/no.103/no.104/no.105/no.106/no.107/no.108/no.109/no.110
no.111/no.112/no.113/no.114/no.115/no.116/no.117/no.118/no.199/no.200/no.201
no.202
/no.203/no.204/no.205/no.206/no.207/no.208
no.209
/no.210/no.211/no.212
no213子どもの育ちと関わるということ
no214 2つの協働事業の取り組み
no.215感じる・考える・選ぶ・結果を獲得する
no216「格差社会」をあなたは望みますか?

no.217「女性は産む機械」発言で、思うこと
no.218「死」と向き合うことは、「生」を実感すること