かえこのちょっと言わせて (no.85)

ジェンダーってなぁに?
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    「ジェンダー」って悪いこと?

  「『ジェンダー』って悪いことではないんですか?」
 先だって実施したSEANスタッフ公開研修「だれもがありのままの自分で」の中で、
参加者から素朴なそして、とても良い質問が投げ掛けられました。
 「ジェンダー」という言葉は、現在多様な使われ方をしています。
日本で一般的に使われているのは、「社会的・文化的に作られる性差」という意味ですが、
アメリカでは個々の持つ「性自認」や「ジェンダー観」として使われているという話や、
そうとは限らずいろいろな使われ方をしているという話も耳にします。
 「ジェンダーの視点」「ジェンダー・フリー」「ジェンダー・ロール」「ジェンダー・バイアス」
「ジェンダー・イコール」「ジェンダー・センシティブ」「ジェンダー・レス」etc.
 「あ〜、もう何がなんだかわからない!」といった現状で、正解を一つ誰かが決めてくれると
スッキリするのになんてことを考えてしまいがちですが、基本的に「ジェンダー」そのものに
「良い」も「悪い」もないと私は思っています。
 言葉を一つずつ定義していくことは自分自身の考えや価値観に気づくことであり、
互いの考えの違いを明確にする上でもとても重要なことです。
また、言葉を得ることは市民権を得ることです。例えば従来「夫婦喧嘩」などとして片付けられてきた、
親しい関係の中で起こる暴力が、「ドメスティック・バイオレンス」という言葉によって市民権を得たことで、それに対する対応策が議論され、自分を責めあるいは2次被害によってさらに傷つけられてきた
被害者が救われる大きな力となったように、共通言語として市民権を得ることはとても大きな
意味を成します。
 ロゴをご覧になったらわかるように、SEANでは当初「ジェンダー・バイアス・フリー」という言葉を
使っていました。「バイアス」には先入観、偏見、固定観念などの意味があり、性別による思い込みを
捨てることで相互にいい関係をつくり無用な支配関係や暴力のない社会を築くことが
SEANのミッションです。けれども、「ジェンダー・バイアス・フリー」という言葉があまり使われて
いなかったことで、ある時期から「ジェンダー・フリー」という言葉を使うこととしました。

 社会には、(女男の2分化された)性別による固定観念や偏見がたくさんあります。
私たち個人の「ジェンダー・アイデンティティ」は、何気ない日常の中で築きあがられていきます。
特に、子ども時代における大人からのジェンダー・メッセージはとても大きな影響力を持ち、
そこからピア・プレッシャーも生まれていきます。
 私たちが現在生活している何気ない日常・社会や自分自身に内実する「ジェンダー観」を、
「ジェンダーの視点」で問い直してみる。すると、様々な問題が見えてくるはずです。
「〜らしく」なれないことで生まれる自己否定や「〜らしく」振舞えたことでの優越感、
「〜らしく」振舞わない人への偏見や差別、そして「〜らしさ」の役割を住み分けることでおこる
支配関係とそれに伴う暴力などなど。
 かといって性別による「〜らしさ」を全面否定してしまえば、自己を否定することにもつながります。
自分のあるがままと向き合うことで、例えば「女」である私が自分の中の「女らしさ」と
出合うこともある訳です。それを嫌悪し否定するのではなく、それはそれとして受け入れ、
自分の中にいわゆる「男らしさ」と出合った時には新しい発見や可能性として受け入れていけば
良いのだと思います。その上で突き詰めて考えれば、「女らしさ」「男らしさ」といった2分割で
自分自身を解釈する必要もないということにも気づくはずです。
 それと同じく、子どもたちを愛しみ育む感情を「母性」「父性」と、わざわざ分けて考え役割を
固定化する必要もないと思ったりもしています。

 「ジェンダー・フリー」とは、ジェンダーの視点で社会や自分自身と向き合い、新たな
「ジェンダー・アイデンティティ」を築き上げること、偏見、差別、支配や暴力がない社会を
築くことなのだと考えます。
 「ジェンダー・フリー」という言葉を叩き潰そうとする動きが、議会やメディアを通して起こっています。
これまで女性たちが中心となって権力構造へ異論を投げ掛ける活動を続け、ようやく市民権を
得始めた矢先に、言葉を封じ込めることで時代を逆行させる意図をそこに感じます。
 この言葉にこだわり市民権を得るまで、今後も粘り強く使い続けていくかどうかは、
これからの私たちの課題として仲間とともにじっくり考えていきたいと思っているところです。
                   2004,5.1  かえこ


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